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仙台高等裁判所 昭和52年(ネ)186号 判決 1978年9月06日

控訴人(附帯被控訴人)

横山正

右訴訟代理人

稲村良平

外一名

被控訴人(附帯控訴人)

狩野静雄

右訴訟代理人

石神均

主文

本件控訴ならびに附帯控訴にもとづいて原判決を次のとおり変更する。

控訴人は、被控訴人に対し、別紙第一目録記載の不動産につき、被控訴人が佐藤つぼみとの間で仙台法務局佐沼出張所昭和四九年六月二二日受付第四六二一号所有権移転請求権仮登記にもとづき同年七月二九日売買を原因とする所有権移転登記手続をすることを承諾せよ。

控訴人が、佐藤つぼみ、佐藤幸八に対する仙台法務局所属公証人大島長男作成昭和四九年第一一八八号公正証書の執行力ある正本にもとづき同年七月一日に別紙第一、第二目録記載の各不動産についてした各強制執行を許さない。

控訴人に対し別紙第二目録記載の不動産につき、被控訴人、佐藤幸八間の仙台法務局佐沼出張所昭和四九年六月二二日受付第四六二二号所有権移転請求権仮登記にもとづき同年七月二九日売買を原因とする所有権移転登記手続の承諾を求める被控訴人の請求を却下する。

控訴人の反訴請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その一を被控訴人の負担とし、その四を控訴人の負担とする。

当裁判所昭和五二年(ウ)第一〇三号強制執行停止決定はこれを認可する。

前項にかぎり仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一<証拠>によると、被控訴人は、昭和四九年五月一四日、佐藤つぼみから同人所有に係る別紙第一目録記載の不動産を、佐藤幸八から同人所有に係る別紙第二目録記載の不動産を、それぞれ知事の許可を条件として合計代金一二〇〇万円で買い受けることを約し、翌一五日右代金を支払うとともに、同年六月二二日、別紙第一目録記載の不動産については仙台法務局佐沼出張所同日受付第四六二一号をもつて、別紙第二目録記載の不動産については同出張所同日受付第四六二二号をもつて、それぞれ所有権移転請求権仮登記を経由していた(右各仮登記が経由されたことは当事者間に争いがない)ところ、同年七月二九日、右各不動産の売買について農地法第三条の規定による知事の許可があつたことを認めるに足り、右認定を左右するに足る証拠はない。右事実によれば、他に特段の事情のない限り、被控訴人は昭和四九年七月二九日別紙第一、第二目録記載各不動産の所有権を取得し、佐藤つぼみに対しては別紙第一目録記載の各不動産につき、佐藤幸八に対しては別紙第二目録記載の不動産につき、それぞれ上記認定の各仮登記にもとづく所有権移転の本登記手続を請求し得る実体上の権利を有するに至つたというべきである。

二<証拠>によると、控訴人は昭和四九年二月二三日、佐藤幸八とその妻佐藤つぼみ、佐藤寛一を連帯債務者として金三〇〇万円を弁済期同年六月一五日、利息日歩四銭一厘、損害金日歩八銭二厘の約定で貸し付け(もつとも、右乙第五号証の約定書の佐藤幸八の作成名義部分は佐藤つぼみの記入によるものであり、佐藤幸八が右の貸付を承諾していたとは認め難い)、同年三月二日、右貸借について仙台法務局所属公証人大島長男により公正証書(昭和四九年第一一八八号)が作成されたことが認められ、控訴人が右公正証書の執行力ある正本にもとづき本件各不動産の強制競売の申立をし、同年七月一日強制競売開始決定がなされ、同月二日その旨の登記が本件不動産について経由されたことは当事者間に争いがない。<中略>

四つぎに、別紙第一目録記載の不動産について被控訴人のため所有権移転請求権仮登記が経由されたのは昭和四九年六月二二日であり、控訴人の申立に係る強制競売申立登記がなされたのはこれに後れた同年七月二日であることは当事者間に争いがなく、被控訴人が右不動産の売買について知事の許可を得て所有権を取得し、佐藤つぼみに対し右仮登記にもとづく本登記手続を請求し得べき権利者となつたことは前記一、判示のとおりである。したがつて、被控訴人の右仮登記に後れている登記上の利害関係者である控訴人は、被控訴人が右仮登記に基づく本登記手続をなすにつき承諾する義務があるというべきであるから、控訴人に対し別紙第一目録記載の各不動産につき右の承諾を求める被控訴人の請求は理由がある。

五ところが、別紙第二目録記載の不動産については、前示第四六二二号の仮登記にもとづいて昭和四九年八月七日受付第五九〇九号で同年七月二九日売買を原因とする所有権移転登記が、控訴人の承諾のないままに経由されていることは当事者間に争いがない。不動産登記法第一〇五条第一項は同法第一四六条第一項を準用することにより、仮登記権利者が本登記をするについては登記上利害の関係を有する第三者の承諾書またはこれに対抗し得る裁判の謄本を添付することを要すると定めているから、右第三者に該当する控訴人の承諾書がないままに経由された前示本登記手続は元来手続的な有効要件を欠くというべきであるけれども、前記一および二で判示したところによれば、佐藤幸八は被控訴人に対し別紙第二目録記載の不動産につき前示第四六二二号所有権移転請求権仮登記にもとづく所有権移転の本登記手続を履行すべき義務を負うものであり、控訴人は被控訴人が右本登記手続をなすにつき承諾をなすべき義務を有することが明らかであるから、右不動産についてなされた前記所有権移転の本登記は実体的には真実の権利関係に符合する登記であるというべく、右本登記につき控訴人の承諾を欠くという申請手続上の瑕疵だけで、これを無効と解するのは相当でなく、なお有効な登記と解するのが相当である。

したがつて、右の本登記が控訴人の承諾を得ずになされたという手続上の違法を理由として前示所有権移転登記の抹消登記を求める控訴人の反訴請求は理由がなく失当として棄却すべきである。<中略>

六最後に第三者異議請求について判断する。被控訴人が昭和四九年七月二九日別紙第一目録記載の各不動産について所有権を取得したこと及び右不動産につき同年六月二二日所有権移転請求権仮登記が経由されたことは前記のとおりであるが、右仮登記に基づく所有権移転の本登記がいまだなされていないことは被控訴人の自認するところである。そして仮登記については、元来、本登記の順位保全の効力を有するだけで仮登記によつて表象される権利を第三者に対抗し得る効力を有しないものと解するのが相当であるけれども、本件のように控訴人が被控訴人の仮登記に後れた登記上の利害関係者として被控訴人の本登記につき承諾をなすべき義務を負担している場合(本件においては第三者異議請求と本登記承諾請求が同時に提起されている)には、控訴人は被控訴人の本登記の欠缺を主張し得る正当な第三者に該当しないと解するのが相当である。したがつて被控訴人は、別紙第一目録記載の不動産について仮登記原因の成就により取得した所有権を控訴人に対し本登記を経由することなく対抗し得るというべきであるから、右所有権にもとづいて控訴人のした別紙第一目録記載の不動産に対する前記競売手続の排除を求め得るものといわなければならない。また別紙第二目録記載の不動産については、被控訴人が所有権を有し且つ既に対抗要件として有効な所有権移転の本登記手続を経由していることは、既に認定したところにより明らかであるから、被控訴人はその所有権にもとづいて控訴人のした本件競売手続の排除を求め得ること言をまたない。

七以上の次第で、被控訴人の本訴請求中、別紙第一目録記載の不動産に対する本登記承諾請求と別紙第一、第二目録記載の不動産に対する第三者異議の請求は、いずれも理由があり正当としてこれを認容すべきであるが、別紙第二目録記載の不動産に対する本登記承諾請求はこれを却下すべきであり、また控訴人の反訴請求は、いずれも理由がなく棄却すべきである。<以下、省略>

(兼築義春 守屋克彦 田口祐三)

第一、第二目録<省略>

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